職団戦顛末記 ―将棋フォーカスチームとの対戦―

コラム
 3月某日、日本将棋連盟職員の方から電話があり、職団戦F級の一回戦の相手がN
HKの将棋フォーカスチームであることを知らされる。動揺。テレビに映るかもしれ
ないので問題ないかとの打診があり、承諾する。宝くじに当選した気分。
 だが一瞬承諾したことを後悔した。全国ネットだよな。番組構成上、向こうの大将
は、つるの剛士さんであろう。三段の免状を持っており、講師の鈴木大介八段をはじ
めプロ棋士がバックについている。公開処刑だけは避けたいと強く思った。
 当日、よほど緊張していたのだろう。間違えて快速に乗ってしまい北千住まで連れ
て行かれる。なんとか会場に辿り着きメンバーと合流。皆、緊張の色が隠せない。F
級の我々が対局する一角だけ、やけに人が多く、プラスチック製のチェーンで取り囲
まれている。金網デスマッチですか?
 間近で見る、つるの剛士さんは颯爽としており尋常でないオーラが漂っていた。対
局が始まると、終始にこやかだったつるのさんが変貌し、勝負師の顔になる。つるの
さんのダイレクト四間飛車に対し、天下一将棋会で500局は指している六筋位取り
右四間を採用。仕掛けの難しい将棋だったが、指し過ぎを咎め玉頭を制圧し、なんと
か公開処刑は免れた。テレビ放映後、たくさんの方からテレビ観ましたと声をかけら
れた。この先こんな経験はないだろう。つるのさん、NHKの方々には、この場を借
りてあらためてお礼を言いたい。ありがとうございました。
   (二〇一三年八月号 M)