全題正解者

コラム
昔、近代将棋の詰将棋欄が好きだった。全題正解者が掲載されるページが充実して
いたからだ。
 そもそも詰将棋には根気や忍耐力が必要だが、私はすこし考えてわからないと我慢
できなくて、単行本などの場合はつい答えを見てしまうのであった。その点月刊誌だ
と、解答発表まで答えがわからない。将棋ソフトはまだなかった。私は全題正解者欄
に名前を出したくて、なんとか自力で期限までに解こうと毎月頑張った。
 だが、なかなか全題正解できなかった。当時、近将の詰将棋欄には短編の「鑑賞室」
と中長編の「研究室」があって、全題正解者が都道府県別に発表され、氏名の上に鑑
賞室は〇が、研究室は◎がついた。氏名発表だけのために毎月2~3ページを割いて
いたが、○だけの人が多く○に加えて◎もついている人は非常に少なかった。お察し
であろうか。そうだとも、私は一度でいいから◎が欲しかったのだ。
 自慢話になって恐縮だが、何年もかけて昭和53年5月号でついに念願の◎を実現
したときは本当に嬉しかったですよ。けだし私の根気や忍耐力はあの時期に培われた
に違いない。全題正解者欄のおかげである。             
   (二〇一三年五月号 M)