少年は、書店で「近代将棋」(130円)に出会った。それまで「将棋の指し方」
(土居市太郎八段・影山稔雄共著)しか持っていなかったので、将棋にも雑誌がある
ということが、なんだか嬉しかった。将棋会館(木造建)に行ったら、8級(当時の
会館道場で最低の級)と認定された。道場に通えば強くなれると思ったのだが、なか
なか勝てないので、いつまでたっても8級のままだった。「よい子の将棋会」にも参
加してみたが、年下の子たち(M部一男君など)に簡単に負けてしまうのだった。郵
便将棋同好会に入会して、全国各地の人たちと郵便将棋を指した。C級5組で6勝15
敗という結果だった。その頃、郵便将棋で知り合った方に勧められて「詰パラ」(100
円)を購読するようになった。将棋は負けるとキツイから、少年はだんだん指将棋か
ら遠ざかり、詰将棋の世界に逃避したのだが、詰将棋も今ひとつ上達しなかった……。
初めて近代将棋を買った日から50年近くが経ち、階前の梧葉はすでに秋声である。
今日書店で、「大人のための将棋再入門」を買った。昔、少年が1回戦で敗退した高
校選手権における第1回優勝者、沼春雄氏の著書である。
(二〇一二年二月号 M)