『駒落ち至上主義』

コラム
 将棋を楽しむにあたって避けがたい問題の1つに棋力の差がある。その問題を解消
するために、おそらく最も有効な手段が“駒落ち“である。とはいえ現実には駒落ち
は敬遠されるケースが多い。
 私もそうだがたいていの下手は駒を落とされることへの抵抗感があるし、その心情
を汲むと上手からは提案しづらい…そんなジレンマが常につきまとうもの。
 またプロ棋戦はもとより、アマ大会でも平手が標準であるゆえ、それならわざわ駒
落ちを経験することもないのかもしれないし、そう考えると平手至上主義的な見方が
幅を利かせるのも無理はない。
 オールドファンなら周知の事実だと思うが、かつてプロ棋界では駒落ちが採用され
ていた。それも公式戦で。残念なことに現在では、駒落ちの制度は消滅してしまった
が、アマ棋界まで追随することもなかろう。
 事実、わが太陽研では積極的に駒落ちが導入されている。つい先日も現役の奨励会
員の方の御好意で、ガチンコ(!)指導将棋が催されたばかり。あの升田先生ですら、
角落ちの下手を持っていたことがある。それに倣わぬ手はないと思うのだが…。
   (二〇一二年十一月号 M)